女のため息

名古屋郊外在住 アラ還の平凡な主婦です。経験したことや、思ったことを 思い出しながら綴りたいと思います。

ソロバン塾での轟音。その時みんなは??

「記憶に残っている、あの日」
なんて、仰々しい題名。きっと感動モノの話が綴られるんだろうなぁ〜。その手のモノは、皆さんに任せて、ど〜でも良い、しょうもない話をしてみようと思います。ちょっと下品で、皆様のお耳汚しになろうとは思いますが、宜しければお付き合い下さい。



私の子供の頃、もう半世紀以上前の話だが、お稽古事として、『ソロバン』が流行っていた。周りの殆どの子たちが、当たり前のように通っていた。平日の毎日、30分の塾で、大体は小学3年生か4年生辺りから習いだした。私も、ご多分に漏れず4年生から近所のYちゃんと通った。



その塾は、多くの生徒で溢れかえっていた。第1部から第何部まであったか忘れてしまったが、学校が終わっての4時から、夜の8時過ぎまであった。塾は先生の家で、6畳と4畳半の和室の畳の上に粗末な長机を何台も並べて行っていた。そこに子供達がぎっしり座ってソロバンを弾いていた。


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自分のテキストとソロバンを持ち、先生に教えを請うために並ぶ。順番が来ると、机の前の先生と面と向かい指の使い方などを教えてもらうのだが………。その先生がすこぶる怖い。苦み走った顔も渋い声も………。眼光鋭いとはこんな人を言うのかと思うぐらい怖い。で……、そんな先生の前に立つと、皆ビビってしまい指が固まって上手いように動かない。すると先生は、指をバシッとソロバンで叩き一言「違う!」。てな具合で、ますます教室の空気が重くなる。



一通り教えを請うて席に着き黙々とソロバンに向かう。そんなシーンとした空気の中、突然教室中に鳴り響く轟音。



『ブホッ!』


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すると、皆が一斉に反応するが、直ぐに静かになり、ぐっと堪えているもよう。皆の肩が震えている。時間差で、辺りを見廻し、音の出どころを見付けようとする子もいるが、大多数の子は黙々とソロバンを弾いていた。私も、笑いをぐっと堪えて問題に集中しようとしていた。



その時だった………。隣のYちゃんが、ソロバンを弾きながら、ボソッと言うのだった。



「今のワタシ・・・」



「・・・・・」



聞こえないふりをして、ソロバンを弾く。弾く指が震えていた。






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「ご破算で願いまして〜~は〜〜」と聞くとあの日のことが思い出される。










はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」